市場の熱狂、創造的破壊、そして容易なマネーの終焉:デイブ・コルムとの対談

市場が新たな高値を更新し、投資家の熱狂が高まる中、コーネル大学の化学教授デイブ・コルム氏は、金融市場と社会全体のトレンドについて冷静な視点を提供しています。彼の分析によると、私たちは数十年にわたる容易なマネーの時代の終わりに近づいており、それは投資家や社会全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。
市場の基盤
コルム氏によれば、市場の根本的な問題は、数十年にわたる緩和的な金融政策によって歪められてきたことにあります。その明確な兆候の一つが、プライベート・エクイティ企業が「企業の破壊」で利益を得られることです。つまり、企業を買収し、負債を抱えさせ、資産を売却し、最終的に47%の確率で破綻させることが可能になっています。価値を破壊することが利益を生む場合、それは金融環境が緩すぎることを示唆しています。
これは金利と市場サイクルに関する広範な仮説にもつながります。コルム氏は、ウォーレン・バフェットが1999年のFortune誌で述べたように、長期的な市場パフォーマンスを決定するのは、GDP成長率や戦争、パンデミックではなく、金利の動向であると指摘しています。1967年から1981年にかけて金利が上昇した際、インフレ調整後の市場は75%下落しました。一方、1981年から現在にかけて、金利が17%からほぼゼロに低下したことで、市場は急騰しました。
過大評価の懸念
現在の市場は、歴史的な尺度から見ても大幅に過大評価されているように見えます:
- 一部の指標では、市場価値が適正水準の200%を超えている
- ケース・シラー指標(1880年から1990年のデータで正規化)では、市場が38と評価されており、歴史的平均の12を大きく上回っている
- インフレが過大評価を解決するわけではない。なぜなら、価格と利益の両方がインフレの影響を受けるため
さらに懸念されるのは、過大評価の状態からの成長が不可能であることです。例えば、1990年代後半にコカ・コーラのPER(株価収益率)が50倍だった際、利回りは2%しかなく、一方で10年物国債は5.5%を提供していました。仮に利益が2倍になったとしても、利回りは4%にしかならず、リスクに見合う報酬とは言えません。
FRBのジレンマ
多くの人が、連邦準備制度(FRB)が市場の下落を阻止するために、無制限の金融緩和と金利引き下げを続けると信じています。しかし、コルム氏は、その戦略が今後も機能するかは疑わしいと警告します。2008年と2020年には機能したかもしれませんが、インフレの制約があるため、次回も同じ手法が通用するとは限りません。
金融政策に関する重要なポイント:
- 世界のM2マネーサプライは歴史的にインフレと連動している
- FRBは、システムに組み込まれたインフレ期待によって「行き詰まる」可能性がある
- 労働組合活動や請負業者の見積もりには、すでに大幅なインフレ予測が組み込まれている
- 従来のインフレ指標は、実際の価格上昇を過小評価している可能性がある
創造的破壊とテクノロジー
技術革新について、コルム氏は創造的破壊のペースに関する慎重な見解を示しています。イノベーションは必要ですが、社会が投資を償却する前に技術が陳腐化すると、無駄と破壊が生じる可能性があります。
現在の技術変革に当てはまる点:
- AIは、かつて安全だと考えられていた職を脅かしている
- デジタル変革は、明確な利益がないまま消費者に負担を移すことがある
- 変化のペースは、金融緩和によって人工的に加速されている可能性がある
ポートフォリオ戦略
これらの懸念を踏まえ、コルム氏は防御的なポートフォリオ戦略を維持しています:
- 最大のポジションは現金同等物(2年物国債)
- 金(約27%)を大きく保有
- 株式は長期下落の可能性があるため回避
- プラチナへの投資に関心(逆張りの視点)
結論
市場が依然として熱狂する一方で、コルム氏の分析は慎重な姿勢を取るべきだと示唆しています。極端な評価、金融政策の制約、技術の加速的変化が、従来の投資手法にとって難しい環境を作り出す可能性があります。
「市場は最終的に歴史的なバリュエーションに回帰する」というのは確かですが、そのプロセスがどのくらいの時間を要するのか、またどのような形を取るのかが鍵となります。コルム氏はこう述べています。「投資家は、長い時間をかけて魂を少しずつ引き裂かれるような経験をすることになるだろう。」